演劇の誕生とともに開発と進化をとげてきた世界。
あるときは、役の心情を映し。
あるときは、時代背景を映してきた。
それが
「持ち道具」や「大道具(セット)」と呼ばれるものです。
しかし、なぜ今「道具の使い方」についてクローズアップをするのか。それを、今回は綴りたいと思います。
「なぜ今、道具の使い方が大事なのか」
現在の映像世界では、アップを多用する傾向があることにお気づきでしょうか。
なぜそうなるのかについては「タレントの現場|最新事情」の記事でご紹介していますので、ぜひご一読ください。
そんな「今」の映像世界では、特にメソッド演技。言い換えれば「自然な演技」とよばれるリアリティのある演技がさらに求められることになります。
そういった環境では、高度な技術と表現力がなくては視聴者にとって、とても退屈な時間となってしまいます。
そこで、演じる側としては「アップしか映っていない画像」という限られたフレームの中では、背景や大きなしぐさに頼れないという状況になります。
とはいえ、いわゆる「クサイ」といわれる大げさな演技や、フレームからはみ出てしまうようなオーバーアクションもできません。
そのような環境では、効果的に感情を表現するのには限界がありますよね。そこで私が「活用すべきもの」と考え、クローズアップしたのが今回のテーマ。
「道具の上手い使い方」
なのです。
「道具の準備」
「道具」というのはほとんどの場合自分で用意するものではなく、小道具(持ち道具)さんなどのスタッフが用意するものなので、その場にあるものから選択して使うという応用力が必要でもあります。
でも台本を深く読み込めば、だいたいその場の撮影環境はわかるものです。
喫茶店のシーンであるならば、コーヒーカップや、水、おしぼりやメニュー、といったものがあります。公園のシーンなら、くさりにぶらさがったブランコや、カラフルなジャングルジムなど。
監督やディレクターは、シーンごとにその役の心情に合った情景での撮影場所を考えていますので、そこにはほとんどの場合使える道具があるものです。
「使い方のパターン」
次に、使い方についてですが、一番効果的なのは自分(または相手)の心情をその道具に映して見るという技術。
たとえば、優しい言葉をかけられてうれしくなった場合には、目の前のあったかいコーヒーカップを手のひらで包んでみる。
たとえば、冷たい言葉を投げかけられた時には、ブランコの鎖(くさり)の冷たさに気づいてみる。
たとえば、悩んでいる時には、グラスや、ウインドゥに映る自分の顔を見つめてみる。満員電車のつり革を空振りする。
このように、今の心情や心の動きを、道具に映したり、載せたりすることで大げさな表情や、フレームからはみ出てしまうようなオーバーアクションは、しなくてすみます。
つまり、「道具」をただの物体と思わず、「自分の一部」と思うことで、その効果的な使い方や表現方法は無限に増えてくるのです。
「一番大事なこと」
そして一番大事な事を最後に。
道具とは、スタッフの方々や職人さんが用意されているからこそ、そこにあるのです。
一つのシーンだけでも、全体を通した演出意図や、消え物(食事や飲み物など)の段取りや、カメラ位置の計算など、とても多くのスタッフが関わって作られているのです。
そこで、道具を使う上で一番大事な事。
必ず監督や担当スタッフの方に、前もって許可をもらうこと。
スタッフの方々の支えがあることに、常に感謝する気持ちを忘れないこと。
これこそが、道具を使う上で一番忘れてはならないことなのです。
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#小道具の使い方