トニー賞(2019年)受賞者が語る|一流を継続するための3つのルール

今年も開催されました!演劇大好き、ミュージカル大好きな私たちが、狂気乱舞(精神的に)する、待ちに待った一年に一度のお祭りじゃい!(喜)

それが

第73回トニー賞( Tony award )授賞式

なんです!

これだけインターネットが普及して、あらゆる情報や、娯楽作品を簡単に見ることができる現在の日本の環境ですが、実は、ライブで行われるエンターテインメントの観客動員数は、年々増え続けているんです。

そしてもちろん、ライブエンターテインメントの最高峰であるブロードウェイでも、興行収入・観客動員数が過去最高を記録したそうです。生の演劇やミュージカルは、もりもり盛り上がっているんですね!

その盛り上がりを象徴するのが、今回の受賞式で行われた、歴史に残るとんでもないオープニング。

 

序幕:オープニング

なんと、司会のジェームズ・コーデン(James Corden)さんをはじめ、今回ノミネートされている超一流キャストの方々が、めいっぱい出演しての、10分間にも及ぶライブステージで幕が上がりました!

テーマは、毒を吐いても憎めない、ジェームズ・コーデンさんのキャラクターを活かしきって 「(生の舞台は)チケットが高く、座席がせまく、見る時間を選べない。」など、劇場の難点を揶揄しながらも、テレビドラマなどでは味わえない「生の迫力と、失敗できない緊張感、そして会場が一体となる共有感」という、ライブステージの魅力を謳いあげています。さらに、すかさずテレビへのゴマすりも盛り込んで(笑)、オープニングからスタンディングオベーションの嵐!

↑いつ練習したんでしょうね?

 

第一幕:トニー賞ってなに

あらためてオープニングを観て、興奮冷めやらぬ私ですが、まずはこのブログをこの記事から読んだ方に、「トニー賞とは何か」を、チラりと説明しますね。

今年(2019年)4月25日までの一年間という期間内に、ブロードウェイの劇場で上演開始された作品が対象となり、ブロードウェイ関係者700人の投票で決まります。その結果発表と授賞式が、6月10日(日本時間)に開催されました。ジャンルは、主に演劇やミュージカルですが、過去にはブルース・スプリングスティーンさんのソロの弾き語りショウが対象になったこともあります。(すごいですね!)

トニー賞についての、さらに詳しい説明や去年の受賞作品については、過去の記事でも書いてますので、よければこちらもご覧ください。↓

 

第二幕:2019年トニー賞の主な受賞

それではここで、今年(2019年)のトニー賞受賞をサクりとご紹介しましょう。

<作品賞>

  • ミュージカル部門=ハデスタウン:Hadestown
  • 演劇部門    =ザ・フェリーマン:The Ferryman

↑映像は「ハデスタウン」:ギリシャ神話「オルフェウスとエウリディケ」の話を現代化させた新作ブロードウェイミュージカルです。 ジャジーかつフォーキーな音楽と、今回のトニー賞では13部門でノミネートされ、8部門も受賞するほどの、照明や装置などが堪能できる舞台です。

 

<主演男優賞>

  • ミュージカル部門=サンティーノ・フォンタナ: Santino Fontana <作品「トッツイー」(原題: Tootsie )>
  • 演劇部門    =ブライアン・クランストン:Bryan Cranston <作品「ネットワーク」(原題:Network)>

↑映像は「ネットワーク」: 1976年に公開された同名の映画を元にした舞台版。番組の質や内容よりも視聴率の獲得が重視されるメディアやニュースへの批判をテーマにした社会的作品 。 個性的なステージセット(上の映像はすべてステージセット!)と、ハンドカメラのライブ映像を駆使したステージ演出が圧巻です 。

 

<主演女優賞>

  • ミュージカル部門=ステファニー・J・ブロック: Stephanie J. Block <作品「シェール・ショー」(原題: The Cher Show )>
  • 演劇部門    =エレイン・メイ: Elaine May <作品「ザ・ウェイバリー・ギャラリー」(原題: The Waverly Gallery )>

↑映像は「シェール・ショー」:グラミー賞、アカデミー賞を獲得したアメリカを代表する歌手のシェール。彼女の半生を描いたミュージカルで、彼女の生きた時代によって、演じる女優が変わる。3人の女優が引き継いでいくという演出の、ブロードウェイ版「おしん」。

 

<助演男優賞>

  • ミュージカル部門=アンドレ・デ・シールズ: Andre de Shields <作品「ハデスタウン」(原題:Hadestown)>
  • 演劇部門    =バーティー・カーヴェル:Bertie Carvel<作品「インク」(原題:Ink)>

↑画像は助演男優賞(ミュージカル部門)受賞スピーチ中の、アンドレ・デ・シールズ さん。

ついにきました。今回私が、一番みなさんに伝えたかった「あるある言いたい」コーナーです。

御年73歳で現役ミュージカル俳優である、アンドレ・デ・シールズさんが、「これまでお世話になった方々にお礼が言いたい。しかし、みなさんのお名前を言うには、多すぎて時間が足りません。そこでお名前を言う代わりに、私のアーティストとしての、継続と長寿の為の3つの基本ルールをお教えしましょう。」と切り出したのです。

それが、この3つ。

1、あなたを見て、目が輝く人たちに囲まれること

2、早く目的地に着くには、ゆっくり進むこと

3、山頂というのは、次の山のふもとです。だから、登り続けること

・・・説得力ありすぎて、コメントはございません。(土下座)

 

休憩<2秒>

 

第三幕:これからのエンタメ業界

そしてもう一つ、今回のトニー賞では今後のエンターテインメント業界の大きな流れとも言える受賞がありました。

それがこちら。

<助演女優賞>

  • ミュージカル部門=アリ・ストローカー:Ali Stroker <作品「オクラホマ!」(原題:oklahoma!)>
  • 演劇部門    =セリア・キーナン・ボルジャー:Celia Keenan Bolger <作品「アラバマ物語」(原題:To Kill a Mockingbird)>

↑映像は「オクラホマ!」: 舞台は、まだオクラホマ州がアメリカの正式な州として認められていなかった1907年のとある農場を舞台にした大ヒットミュージカル。1943年の初演から75年振りにブロードウェイの舞台に戻ってきたリバイバル作品です。 この作品に出演した、 アリ・ストローカー さんは、車イスを使用している俳優として初めてトニー賞を受賞したのです!

受賞式でアリ・ストローカーさんは、「この賞は、すべての子供たちに捧げます。ハンディキャップを持ち、困難にチャレンジしながら、いつかこの場に立つことを夢見るあなたたちに。」とスピーチ。会場は総立ちで、大きなスタンディングオベーションに包まれました。

この流れは、現在のブロードウェイで定着しつつある、人種や性別やハンディキャップにこだわらない「ダイバーシティキャスティング」を反映させた(もちろん実力での受賞ですが)ものであり、これからのエンターテインメント業界の流れを大きく変えていく、意味のある受賞となりました。

 

終幕~アンコール

今回のトニー賞を見て思うことはいっぱいありました。でも一番の印象は、ここ数年の、受賞者やプレゼンターの方の政治的なスピーチや、過激な発言の多さという印象とは打って変って、「支えてくれた方々への感謝の気持ち」や、「裏方のスタッフにスポットを当てた構成内容」に、ほっとしました。

エンターテインメントは、「観ていただいた方の明日への活力になってこそ価値がある。」という信念のもとに活動している私にとっても、すごく意味のある特別な受賞式でした。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。<幕>