最高峰の演技と、最先端の演出が観られる、一年に一度の祭典。
トニー賞授賞式を観ました!
感動しました!!
そして勉強になりました!!
まああ、毎回見るたびに、エントリーされる作品の発想の素晴しさと、それを体現する俳優やスタッフの方の技術の高さに度肝をぬき、悦びと悔しさと感動でむせび泣いているのですが、今回のエントリー作品は、いつもよりもさらに各作品の個性が際立ち、これからの演劇界の方向性を示すような作品が揃っていたように感じました。
そこで、今回は「第72回トニー賞を観て学んだこと」と題して綴らせてください!
「トニー賞」ってなに
まずは、興奮する心をいったん抑えて「そんなに興奮する、トニー賞ってなんなの」というところから。
トニー賞(トニーしょう:Tony Award)とは、正式にはアントワネット・ペリー賞 (Antoinette Perry Award)っていうんです。この賞の授与団体のひとつである、アメリカンシアターウィング(American Theatre Wing)の設立に大きく関わった女優さんのお名前が由来で、トニー (Tony) は、アントワネット (Antoinette) を短縮形にした呼び方なんです。なぜ、「ペリー」を持ってこないで「トニー」を拾ったのかは「謎」
そのトニー賞は、映画界のアカデミー賞、音楽業界のグラミー賞、テレビ業界のエミー賞、文学・戯曲の世界のピューリッツァー賞と肩を並べる、アメリカの演劇界で最も権威ある賞で、
「とにっかく、すんごい賞」なのです。
ブロードウェイじゃなきゃダメ
エントリーされるのは、毎年のエントリー期間中にニューヨークは、ブロードウェイの劇場で公演が開始された作品が対象です。一部、特別功労賞や地方劇場賞などもありますが、本来はブロードウェイでの劇場公演作品が対象になります。そして、各賞の受賞者はブロードウェイの関係者700人の投票によって決まるんです。
演劇やミュージカルなど、エンターテインメントの本場「アメリカ」の、その中でも観る目が厳しいお客様が集まる「ブロードウェイ」での上演作品が対象になることで、ますます賞の権威が上がっているのですね。
そのブロードウェイが、なんと!昨年度の興行収入が歴代のトップだったそうです。
そんな「ブロードウェイの興行収入がなぜ上がってきているのか」ということについては、演劇関係者やエンターテインメント業界の方にも興味があるところではないでしょうか。そこで、その要因を、エントリー作品のご紹介と合せて書きとめてみます。
「2.5次元」作品の採用
アニメや漫画・小説が原作の作品を上演することで、これまで50代・60代が主流だった客層の年齢の幅を広げたのはもちろん、原作の再現性に加えて、作品ごとのライブステージならではの魅力を足すことで、単なる低年齢層向け作品にとどまらず、幅広い客層を動員することになっているのです。
『アナと雪の女王』<原題:Frozen> 作品賞・オリジナル楽曲賞など
ご存じ「アナ雪」です。オリジナル映画の曲はもちろん、オリジナル曲を倍の曲数加えて聴かせます。さらにプロジェクションマッピングを駆使しての演出が圧巻です。
『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』<原題:SpongeBob SquarePants: The Musical> 作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞など
有名なアニメを実写舞台化。その実写方法が、スーツアクターではなく、ほぼ生身の俳優が演じるという斬新さが受けています。
その他にも、原作者、J・K・ローリング<J. K. Rowling>の許可のもと「それからのハリーポッター」というオリジナルストーリーでのぞんだ『ハリー・ポッターと呪いの子』<原題:Harry Potter and the Cursed Child, Parts One and Two> は、超人気作品です。
「斬新な演出でのリバイバル」作品の人気
良質な作品を脈々と受け継ぐリバイバル作品というのは、これまでもありましたが、斬新なアイディアや「今の時代」を反映した、「今だからできる」演出でよみがえらせているところが、今回のエントリー作品の特徴です。
『アイランド』<原題:Once On This Island> ミュージカルリバイバル作品賞など
ステージを360度取り囲み、出演者と客席の距離が1メートルというすざましい臨場感の中では、もはや「観劇」というよりも「体験」する舞台。大量の砂を使ったステージ上では、本物のにわとりが卵を生んじゃうこともあるそうです!
『エンジェルス・イン・アメリカ』<原題:Angels in America> 演劇リバイバル賞など
演劇部門でのリバイバル賞の受賞作品。ナイーブな問題を、主人公の一生を追いかけて、7時間にわたって表現する大作。数人のキャストで表現する「エンジェル」が見もの。
その他にも、女性の自立という「今でこその視点」で現在によみがえらせた『マイフェアレディ』<原題:My Fair Lady>
歴代の見せ場であった回転木馬のセットを、ダンサーとその振付だけで表現するという、高度な技術があってこそなりたつ演出で、新たな歴史をつくった『回転木馬』<原題:Rodgers & Hammerstein’s Carousel>などなど、あちこちで才能がだだ洩れ中。
では、ここまできてひとこと。
どの作品も半端ないって~!もう!(号泣)
「これから」の演劇界
ここまでご紹介した作品は、どれも斬新で派手な演出で、観客を沸かせる作品ばかりです。
しかし、そんな中で、ミュージカル作品賞ほか、全10部門で受賞に輝いた作品は次にご紹介する作品。
エジプトの警察音楽隊が、イスラエルの小さな村に一泊することになり、その一夜の出来事を、派手な振り付けや仕掛けはなく、繊細に、ただ淡々と、心のふれあいと変化を描いていくミュージカル劇です。
『迷子の警察音楽隊』<原題:The Band’s Visit>ミュージカル作品賞・主演男優賞・主演女優賞など
スマートフォンからの文字や映像だけでは味わえない感動を求める需要が増え続けている中、今こそアナログでシンプル。かつダイナミックな演劇に回帰していく時代の流れの象徴ともいえる作品です。
視聴者のテレビ離れや、映画館の来場者数減退が進む中で、ここ数年、日本でも生の演劇来場者数が伸びています。サッカーの試合を大画面で共有し、仲間で歓喜することに喜びを感じるように、失敗できないライブステージが成功した時の達成感と、それを共有できる空間こそが劇場の楽しみであり、増えていくニーズなのです。
「トニー賞」から学んだこと
ブロードウェイの、時代を見越したうえで、新しい客層を増やす「創客」(そうきゃく)を、取り入れて実施していくことが、生き残るための絶対条件。
これこそが「トニー賞」から学んだことでした。
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