いや感動しました。
ミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」(原題:La La Land)の製作チームが、ふたたび心に残る傑作映画を、創り出してくれました。
映画「グレイテスト・ショーマン」(原題:The Greatest Showman)
とにかくオープニングシーンから、心をつかむミュージカルのサビ部分からはじまり、ムダをいっさいそぎ落とした、スピーディーかつドラマティックな展開の、ソリッドな映画です。さらに、マイケル・グレイシー監督が、長編映画初監督作品だということを知り「世界には、どんだけ才能ある人おるねん!」と思わず大坂弁になるほどのおどろきでした。
この映画は、「感動的なストーリー」「どの曲も心に残る音楽」「新鮮な映像美」など、見どころはたくさんあるのですが、主演のヒュー・ジャックマン(Mr.Hugh Jackman)をはじめとする、出演者の方々のすばらしい演技に魅了されて、私も「ミュージカル俳優になりたい!」と思った方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事のテーマは、
「ミュージカル俳優になるには」
です。ご覧ください。
ミュージカル俳優とは
「俳優」として、いろんなお仕事がある中で、一番難しいジャンルの一つが、ミュージカルです。
というのも、演技はもちろん、歌や、ダンスもプロフェッショナルでなければならないからです。
さらに、演技・歌・ダンスすべてにプロの技術を持ったとしても、それが「与えられた役として表現する」という、絶妙なバランス感覚がなければミュージカル俳優としては、仕事になりません。
この、途方もない芸術は、むずかしいからこそ、観るものに深い感動を与えることができる、とてもやりがいのあるジャンルなのです。
ミュージカル俳優|技術の入り口
とはいえ、「演技」「歌」「ダンス」というのは、一つだけでもプロフェッショナルの技術を身につけるのが大変なのに、すべてのジャンルで一流になるなんて、何から、どう始めればいいのかわかりません。
そこで、技術を身につけていくには、何が最優先なのかについて答えます。
まずは一度、基本に返って考えてみましょう。
「ミュージカルならではの良さ」とは何か。
ダンスコンテストで、驚異的な身体能力と、見たこともない振り付けを見たときの感心や感嘆とは違います。
ドラマを見たときの、ストーリー展開や、俳優の感情の揺れ動きを見たときの感動は、ミュージカルの「良さ」とは近いものはあっても、ミュージカルで感じる躍動感や高揚感とはちょっと違います。
では、歌はどうでしょう。「感動する歌」や「泣ける歌」には、必ず歌詞の中に共鳴できるストーリーがあります。これはかなりミュージカルで感じる「良さ」に近いものがありますが、自分にとって共鳴できるストーリーを経験していなければ、感動にはつながりません。
ミュージカルでは、ストーリーという「ドラマティックな疑似体験」と連動して歌われる「感動する歌」こそが「ミュージカルならではの良さ」なのです。
ここで一つの答え
まず「感動する歌」をマスターするべき。
この映像は、この作品が映画としてスタートできるかできないかを問われる、大事なプレゼンテーションで歌われた時の映像です。
この映像では、ワンシーンだけなのにストーリーが感じ取れ、感動してしまいます。
技術マスターのコツ
では次に「感動する歌」をマスターするにはどうすればよいのか。について具体的にお話します。
ミュージカル俳優や、ミュージカルに出演しているスターや、芸能人を観ていると、ある共通点があります。たとえば「サラ・ブライトマン」(Ms.sarah Brightman)の歌声は、その歌の歌詞や、ストーリーを知らなくても、その発声を聴くだけで感動します。
つまり、ミュージカルの「感動する発声方法」をマスターすれば
「それ」らしくなれる。
そして、ひとつでも「それ」らしいテクニックを身につけることで、どんどん他のテクニックも身につけたくなる。⇒ さらに上達してゆく。⇒ ますます夢中になる。⇒ 気がつきゃ、かなりイケてる。
そうゆうもんです。
発声のパターンについて
では次に、具体的な発声方法についてお話します。
1「ナチュラルな発声」
これは、私たちが普段隣の人と話す程度の、無意識で使っている、いわゆる普通の発声です。映画やテレビドラマなど、マイクで音声を録音する場合は、この発声です。
2「腹式(横隔膜)呼吸を使う発声」
舞台出演の場合には、普段のナチュラルな発声では、客席に届かないので、客席数(キャパ)や劇場の大きさに合った大きな声を出せる、腹式呼吸を使った発声が必要になります。この腹式呼吸を使うには、腹筋と横隔膜(おうかくまく)を意識する必要があります。
<※1.腹筋とは、お腹にある、鍛えると6っつに割れるあれです><※2.横隔膜とは、みぞおちの位置にある、肺などを覆っている器官です>
意識する部分として、息を吸い込むときには、肋骨の下半分やお腹をふくらませて空気を入れること。この時に肩が動いたり、胸が動いたりしたら正しくできていません。そして、息を吐き出すときには決してのどを締めつけずに、腹筋がポンプのように空気を押し出すイメージです。
この発声だと、のどを痛めることなく、より遠くに、シャープに発声することができます。
3「腹式呼吸を使って『歌う』発声」
ここまでは、セリフをいうときの発声の基本でした。
しかし、腹式呼吸と腹筋で空気を押し出す発声では、シャープな発声はできても、硬い音になりがちなのです。その理由は、腹筋で空気をポンプのように押し出すので、肺や声帯も押し上げられるため、音を響かせる空間が狭くなってしまうのです。
歌の場合の発声は、体内で音を響かせて厚みを持たせることが必要です。そのためには、腹筋や横隔膜を緊張させ押上げることはをせず、むしろ丹田(たんでん)と呼ばれる、へそから5~10㎝下の部分を張る(あるいは膨らます)発声をすることで、深みのある発声が可能になります。
これが「歌の発声」と「セリフの発声」の大きな違いです
4「ベルカント発声法とは」
歌手の身体は、よく楽器にたとえられます。それというのも、どれだけ体内で声を響かせることができるかが、歌の発声法ではかなり大事だからです。ここまでの、歌うときの腹式呼吸をマスターした方は、歌声をより響かせる方法をマスターしましょう。
横隔膜や腹筋を緊張させず、のどで響かせた音を、さらに頭蓋骨に響かせて、後頭部から発声するイメージを持ってください。そこから出る高音域は、とてもクリアで神々(こうごう)しい表現が可能になります。
5「ベルティング発声法とは」
さあ、ついに到達いたしました。声を発するだけで感動を呼ぶ「あの」発声法がこれです。「腹式呼吸を使って『歌う』発声法からでた音を、さらに鼻や目の内部器官の部分で響かせるのが「ベルティング」と呼ばれる発声法です。たとえば、涙声といわれる、ちょっと鼻にかかった、愁(うれ)いを含む音が力強く響いている音をイメージしてください。
これこそが、ミュージカル俳優がここぞという場面の「サビ」の部分で使う発声法です。
ただし、常にこの発声法で歌えば、メリハリもきかず、身体への負担も大きいため、いろんな発声法を使い分けていくことが必要です。
次の映像は、主演のヒュー・ジャックマン(Mr.Hugh Jackman)が、鼻の手術直後で、お医者さんから歌っちゃダメ!と言われていたにもかかわらず、思わず歌ってしまったシーンです。
いかがでしたか。
とにもかくにも、お客さんが喜ぶのが大好き! ミュージカルが大好き! ということがとても伝わってくる、すばらしい映像です。
あなたが今持っている感動と、モチベーションを持ち続け、演技の質を上げる努力を止めなければ、ミュージカルの世界の厳かな扉は、あなたを迎え入れるために、音をたてて開いていくのです。
ようこそミュージカル俳優の世界へ。(ベルティングで)
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