このところ、人気劇団の直前での公演中止が相次いで、ありました。
楽しみにしていたお客様や、罪のない関係者のみなさまの心労を考えると胸がいたみます。
当事者である劇団の公式ホームページや主催者の方の中止に関する告知を拝見しました。さらにいろんな方の意見をSNSなどで拝見した上で、このブログのテーマなりに私の考えを書いてみました。
題して
「公演中止」について|解決案と芸能人のトラブル対処法
今回の公演中止の本質と解決案
まずは、今回の件のことをよく知らない。という方のために、簡単に説明します。
東京にある「下北沢駅前劇場」という、小劇場公演を中心とした有名な劇場で、「水素74%」という劇団と「Mrs.fictions」という劇団が、公演本番直前にたて続けに公演中止を発表しました。
その中止理由というのが、天災や事故ではなく、両劇団ともが「台本を書くのが遅いのが原因で、納得いく作品をお見せできないから」というものでした。内情はどうあれ、当事者が発表している告知をもとにお話をすすめます。
<中止についてのHPでの告知文>
そのような事態にたいして、いろんな方面からの見方や意見が飛び交っています。
現状をご存じない方向けに、「料理屋さん」に例えて言うなら、この通りです。
がんこなオヤジがやっている料理屋さんが、自分の納得のいく食材が仕入れできなかったため、お客さんに料理が出せそうにないから、予約が入っているにも関わらず、当日になって「今日は店を閉める!」という決定をしました。
それ知った周りの方の意見としては、おおむね3つに分かれます。
<常連客である方の意見>=「オヤジの、いつもの料理が食えねえなら、行っても意味ねえから閉めた方がいい。よくやった!」という意見。
<インターネットや口コミで予約していた方の意見は>=「予約してんだから、約束通り開けなきゃダメでしょ。食材が入らないのはそっちの事情でしょうが。」という意見。
<料理業界に関わる方の意見>=「そんな事情で店閉められたんじゃあ、料理界全体の信頼を失う。『今日は開いてるかどうかわからない』なんて店がはびこったら、ちゃんと開けてる店まで迷惑する。」という意見。
たしかに、料理のお店には有名ながんこなオヤジのお店もありますし「この店来るんなら俺のルールに従え」ってお店もあります。これはもはや、それぞれの「お店」の、信念や経営方針の問題なのでまわりがとやかく言っても答えは出ません。がんこなオヤジにしてみれば、「それがいやなら来るな!」ということでしょうから。
どの意見であれ、正解でも不正解でもなく、答えのない感情論(一部を除く)が飛び交う現状になりました。それというのも、演劇界でこれだけおおっぴらに「そんな理由で中止する」という例がなく、さらに一般に売り出し中の演劇公演というのは、それに関わる方は当事者や、コアなファン以外にも影響が及ぶという点で、波紋を呼んでいます。
ただ、いろんな意見があるにしても、これだけは言えます。「中止で良かった」と思うひとは一人もいないということ。
それでも、これがキッカケで今後もそういうスタイルの劇団ができてくるなら、解決案があります。
当日でもそのような理由で中止になる可能性がある劇団は、いいわゆる「一見さんお断り」の、会員制(ファンクラブ会員や紹介する人がいる方)のみの公演という形式にして、一般の発売や告知はしない。一般への告知のスペースなどは中止しない劇団に明け渡す。ちゃんと棲み分けや区別をする。それが、私が考える解決策です。
芸能人(出演者)として巻き込まれた場合の対応策
前章までのお話は、一般論であり、直接巻き込まれていない場合のお話です。でも、このブログのテーマは、「芸能人になるには」どうすればいいのか。「芸能人になってからより高みに上るには」が、テーマです。
そこで、芸能人としてこれからも続けていきたい、と思っている芸能人(出演者)として、巻き込まれたときにはどう対処するのか。についてリアルなお話をします。
まずは一番大切な「観る側」の気持ちから。
私も舞台演劇が大好きで、公演を探しまくり、観まくるという日々を送っていました。
そんな当時の観劇生活を例えるなら「ガチャガチャを回す楽しさ」がありました。演劇はガチャガチャのように、カプセルからちょっと見える商品に誘われてワクワクしながらレバーをまわします。
でもお芝居は生ものなので、その日の空気により、お芝居も変わるため「思った以上に良いもの」が出るときもあれば「気に入らないのが続けて出る」というように、当たることもあれば、ハズレることもありました。
そしてもっと根本的にいえば、「演劇は芸術なので、本人の感性に合うか合わないか」という意味での「当たりハズレ」もあるということ。
極端な話、革新的な前衛演劇という宣伝の舞台で、幕が上がり60分間、何もない舞台で何もおこらないという内容があったとします。「なんじゃこりゃ!」と思う人もいれば、「革命的だ!」と捉える人もいる。賛否は起こるでしょうが、しかし誰も詐欺だとは言えません。演出や脚本家の方のメッセージを伝える方法が「その方法」ならば。
でもこれが、準備が間に合わなかったために「しかた無いから何もない舞台だけお客さんに見せよう」という理由ならば中止にして欲しいです。
そして、今回の中止された理由が、「台本完成の遅延によるもの」ということでした。
「間に合わなくて、良い作品になる自信がないくらいなら中止したほうがいい」という意見も結構あり、それもよくわかる見方ですね。
しかし、役者には「役作りが間に合わないから」などという理由で公演中止など「ありえない」という空気がありながら、「台本だけ」はギリギリになっても、みんな寛容に対応するという慣例が、あるのです。
そこで、「そもそも台本が間に合わないという事態がなぜ起きるのか」というところを、経験をもとに書いてみます。
台本というのは、出演者を含めた関係するスタッフにとって設計図にあたるもので、その設計図をもとに、各部所が自分の想いを持ち寄り、みんなで練習して、「作品という商品」になっていくものです。
普通、かっちりとした企業が商品を売り出す過程でいえば、
「ニーズ(〇〇な、お芝居観たいなあ。という人)」がある。
「企画会議(だったらこんなお芝居作ろうよ)」をする。
「設計図(みんなこれ見て頑張ってね)」ができあがる。
「製品製造(配役決めて、稽古でつくりあげよう)」をして。
「値段決め(チケット代いくらぐらいがいいかな)」を考え。
「宣伝告知(あそこでこんな宣伝しようよ)」を実行して。
「商品販売(もうすぐ本番だあ。頑張ろう。)」という順番になります。
これがかっちりした、商業演劇などの場合です。
しかし、一部の小劇場では、まず公演をすることを決定して、それから台本をつくっていく。というケースは結構頻繁にあるのです。
それを、「そんなんあるある」の過程でいえば。
「販売決定(芝居やりたい!)」が、まずあって。
「製作者のアイデア(なんとなく伝えたいことはある)」があって。
「部品調達(じゃ、出られる人集めよう)」で動き出し。
「部品調達や製作過程での難航(思ったようにはできなかったけど本番日決まってるしとりあえずやろう)」でやっつける。
「チケット代決定(劇場代金から割り勘計算してみよう)」で売り出し作業開始。
「集まった部品に合わせて平行して作る設計図(台本完成はもうちょっと待ってね)」で、やれるとこまでヤル。
このような流れの作品作りになりがちな理由としては「稽古が始まった段階での、役者の演技や技量をみて設計図(台本)をつくるタイプの方がいる」ということや「設計図(台本)をギリギリまで練り込めるため、より新鮮な時事ネタを取り込むことができる」という利点があること。さらに作者が「追い込まれないと作れないけど、追い込まれることにより、時に爆発的なアイディアがわくことがある」からです。そして実際これまではわいてきたのでしょう。
しかし、お客さんとしては、作者に「天から降ってくるアイディアまかせ」で、当たるのかハズレるのかわからないという、ガチャガチャでいうなら、ギリギリまでカプセルの中身が決まっていない機械で、商品のコストは度外視の値段を投与してレバーをまわすことになるのです。
それでも、楽しみにして、友達の誘いも断って、おやつを我慢して貯めたお小遣いを握りしめて来て、お金を入れてみた後で、機械には「残念だけど、今日はおまけだけ。次来たときには気に入るもん入ってるよ」と書かれた張り紙。むなしく返却レバーを押して帰るだけ。
今回のことで、中止した劇団ごと信頼を失ったことは、間違いありません。まずは見る目を磨いて「巻き込まれる前に逃げる」ことが必要ですが、もしもそんな公演に巻き込まれてしまったのなら、事務手続きなどは所属事務所にお任せするとして、芸能人としての対応は一つです。
「本当に申し訳ないという思い」以外は、何も言わないこと。
そしてこれまで通り、真摯にお客様とお芝居に向き合い続ける。これが、芸能人(出演者)として、できることです。
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