俳優になるために演技の勉強をしていくと、ちょいちょい見かけるアレ。
ちょいちょい見かけるし、まあなんとなく雰囲気もわかる気もするアレ。
そうです。メソッド(メソード)演技というアレです。
しかし結局その「メソッド演技」ってなに?
「メソッド演技」を身につけるにはどうしたらいいの?
という自問自答に答えるべく、今回のテーマはズバリ!
「メソッド演技とは」
について綴ってみます。最後までご覧くださいね。
そもそも「メソッド」ってなに
「メソッド」とは、直訳すれば「方法」「方式」のこと。みなさんは俳優や演技のジャンル以外でも「〇〇メソッド」というキーワードを目にしたことがありますよね。つまり、本来はその方法や、方式の呼び方なので、たとえば「たちばなメソッド(たちばなほうしき)勉強法」というような使い方をします。
ただ「メソッド演技」と呼ばれている演技方法については、「物語の中で、役として本当に気持ちを動かす」という、スタニスラフスキーシステムを基にした、俳優の役としての気持ちの動かし方と、その方法が1940年代のアメリカで盛んに研究され、<リー・ストラスバーグ> <ステラ・アドラー> <サンフォード・マイズナー>という方たちが、それぞれ確立した、方法や方式の流れを受け継ぐ演技法が「メソッド演技」と呼ばれています。
なぜ「メソッド演技」が大事なのか
ドラマとは、ドキュメンタリーではありません。実在の人物や、歴史上の出来事を題材にすることはあっても、あくまで再現でありドラマとして表現します。
例外として、監督の演出でサプライズを仕込み、それが成功するケースもありますが、それは演技とは違うジャンルになりますので、ここではふれません。
ドラマを見ている方は、その物語を目撃して、ストーリーに入り込み、出演者の気持ちになりきってドキドキしたり、感動したりするのがドラマの面白さであり、醍醐味です。つまり、ストーリーに入り込めない不自然な演技はジャマになるのです。特に現代の高画質な映像世界でのドラマでは、より自然でリアルな演技が必要となります。
そこで、大げさな身振り手振りや、わかりやすい表情だけでは表現できない気持ちの揺れ動きを出すために、実際に俳優が俳優としてではなく、演じている「役」として気持ちを動かすことで、より現実に近いナチュラルな演技が可能となり、その演技こそが「メソッド演技」なのです。
これまでの「メソッド演技」法
では、創られたストーリーの中で、どうすれば「役」として本当に気持ちを動かすことができるのか。
たとえば「痛い」という感覚。
食器を洗っている時に、食べ終わった缶詰の切り立った鋭いところをなでて、指を斬ってしまってたところを想像してください。それだけで鳥肌や、寒気がたち、ちょっとドキドキしますよね。ほかにも、とがった物を踏んだ時や、ドアに指を挟んだりする想像をするだけでわずかながら身体に変化がおきます。さらには、レモンをかじることを想像しただけで酸っぱさを感じることができますね、これは、誰しも似たような体験をしていることで、人間の脳は実際に体験をしなくても、想像するだけで身体や気持ちに変化をおこせるのです。
これを利用して、俳優がスタート!の合図で、脳内でストーリー通りの体験をすることができれば、俳優自身が「技術でそれらしい気持ち」を作るのではなく、演じる「役の人格として本当に気持ちを動かしていく」ことができるのです。さらに、一回二回と同じシーンを演じるたびに、気持ちをリセットする技術を身に着ければ、毎回新鮮な気持ちで心を動かすことが可能になるのです。現実には現場でストーリー通りの経験をすることはできませんので、役作りの段階で俳優はこれまでの自分の中での一番近い経験をもとに想像をふくらませて、痛さや、悲しみや、ワクワクドキドキ感を、ストーリーに合わせたバーチャル体験用の世界を脳内に作り上げて現場に臨み、リハーサルや本番では俳優自身がプロジェクションマッピングの投影者となってその世界を体験するのです。子役さんの演技レッスンなどで「悲しさ」を表現するために「近い気持ちを思い出しなさい!」というアプローチをすることもありますね。それも「メソッド演技」法の一つです。
このバーチャル世界の作り方そのものを考えて、実践することこそがメソッド演技のテーマです。
この演技法のベースになっているのが、「スタニスラフスキーシステム」と呼ばれていて、100年たった今でも多くの俳優に影響をあたえている考え方です。<この「スタニスラフスキーシステム」については、過去記事で書いていますので、こちらもご覧ください→『スタニスラフスキーシステム』とは、https://talent27.com/2018/02/05/stanislavski/>
ここまでのお話でいうならば、経験が豊かであればあるほど、ストーリーに合った気持ちがつくりやすくなるため、「役作り」として、できる限り「演じる役」と同じ経験をするということが大事になるのです。
ここまでで大事なキーワードは、2つ。
経験値と想像力
「メソッド演技」のデメリット
ここまでは「メソッド演技」の必要性について、書いてきましたがもちろんデメリットもあります。
一つ目は、とりわけ俳優自信の内面、特に性格や人格を変えて、役に近づける作業となるため、役に深く入りすぎることで、役によっては精神面に支障をきたして、睡眠障害や薬物依存になるケースがあると言われています。
二つ目は、俳優が自分の気持ちをつくるという内面方向への意識が増すため、相手役や目の前の出来事など、外に向かう意識の量が減ってしまい、かえって自然さにかけてしまいがちになるということ。
これからの「メソッド演技」法
ここまでは、これまでに培われてきた「メソッド演技」の概要です。
あらゆる商品や、競技でも、過去の記録を塗り替えるために、これまでの積みかさねをふまえて、さらに技術を磨き、時代や環境に対応して、変わっていかなくてはいけませんし、進歩・発展してこその芸術です。演技法についても同じです。
これまでの「メソッド演技」を身につけるのはもちろん、さらに進化させて、新しくて自分に合った「メソッド演技」を身につけていくべきなのです。
進化させる方向は、あくまでも「より自然な演技」をすること。
ここからは、そのための方法について綴ってみますね。
キーワードはこれ。
意識→無意識→意識の3段階
ふだんの生活の中で、人は「気持ちを作ろう」と考えて、気持ちが動いているわけではありません。でも無意識に「彼の前で泣いてみよう」と思って涙があふれたならばこれはもう、ある意味自然な演技の範疇です。しかし、俳優が演技をしている時に、意識的に「今から泣こう」という思いがちょっとでも入ると、不自然な演技に近づいてしまうのです。そこで「メソッド演技」のデメリットのところでふれた「内面を意識しすぎること」を、できるだけ少なくすることで、目の前の出来事に集中し、純粋かつ新鮮に反応することができるようにすることが大切です。
たとえば、消防士の役を演じる時に、館内にアラームが鳴り響き俊敏に着替えて颯爽と車に乗り込む。本物の消防士ならば日常の出来事なので、それら一連の動作は「無意識」でできているのです。つまり、演じる俳優としては、一連の動きを「無意識」にできるようになるまで、「意識」して稽古する必要があります。そして「無意識」でできるまでになったところで、あらためて役としてドラマとして「意識」して演じ、ストーリー上の出来事に遭遇して「反応」する。
消防士の動きのたとえは、慣れているべき「行動」の意識→無意識→意識というたとえですが、役作りをするうえで、役の人格をいかに緻密につくり、意識して役に入り込み、演じる役の性格を憑依させて、無意識にその役として反応できるほどに役作りをすることこそが、一歩先の「メソッド演技」と言えるのです。
メソッド演技に興味がわいた方は、ぜひともハマってみてくださいね。(ほどほどに)
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